自動車産業でデザイン分野に従事する日本人プロフェッショナルが、メキシコ人が日本人と上手くコミュニケーションを取れるよう、日本の職場環境の特徴を紹介
田中康晋さんは2001年から河西工業に勤務しており、日産自動車のモデルデザインなどを手掛けてきました。現在はカサイメヒカーナでデザイン部のディレクターとして活躍しています。カサイメヒカーナは自動車内装部品の製造・販売を手掛けており、ホンダ・メキシコ、マツダ・メキシコそしてダイムラーなどが主要取引先です。
今回ココ・メキシコへのインタビューでは、田中さんに日本の職場環境やビジネスマナーなどについて語っていただきました。
田中さんがメキシコに来られて何年になりますか? 毎日のルーティンについてお聞かせください。
メキシコへ赴任して1年半になりますが、数年で日本へ戻ることになります。毎朝7時半に出社し、30分の休憩時間を挟んで5時に退社します。日本では8時出社で5時退社、昼休憩は1時間でした。一見メキシコの方が労働時間が長く、休暇が少ないように感じますが、日本では年間を通して残業時間が多いのが現状です。
私の場合は毎日日本との会議があるので、19時半まで会社に残ります。
カサイメヒカーナのデザイン部ディレクターとしての職務内容は? 部の構成について聞かせてください。
デザイン部門は14名で構成されており、日本人2名メキシコ人14名です。アシスタントディレクターはとても優秀なメキシコ人女性です。日本ではデザイン部門のみに従事していましたが、メキシコでは会社の管理業務も兼任しているので日本とのコミュニケーションも図っています。
自動車部品デザインの開発は日本で行われるので、メキシコではデザインを調整して組み立てを行います。会議でデザインが承認され、そうでない場合は修正を加えます。
職場環境に関してメキシコで驚いたことはありますか?
デザイン部の社員は皆、知らないことを学び、更に知識を深めようという意欲に溢れていて、その姿勢に感心しました。
メキシコの職場で一番苦労したことは?
部署の中でのコミュニケーションは英語でとるのですが、日本人にとってもメキシコ人にとっても英語は母語ではないので、時に問題が生じることもあります。
日本のビジネスにおけるメキシコ市場の重要性は?
日系企業にとって、世界のどの市場と比べてもメキシコでの経済成長は可能性を秘めています。河西工業も事業拡張や取引先との関係改善を目指してメキシコに重点を置いています。
職場環境でメキシコが日本から学ぶべきことは?
日本での職場規律をメキシコで適用することは容易ではありませんが、取引先からは日本の企業の特徴である規律ある態度が求められますから、時間厳守は鉄則です。時間厳守というのは、指定された時間までに要求されたタスクを完遂することです。
規律についてもう少しお聞かせください。
規律とは秩序を維持することです。これは国籍(日本人であろうがメキシコ人であろうが)に関係なく、プロとして誰でも守らなければならないことです。
メキシコ人と日本人が共に働く職場環境を改善するためには?
日本には「報・連・相」というビジネスマナーが存在します。
「報告」は任務を受けたものが上司に状況報告すること、「連絡」は関係者に情報(事実)を知らせること、「相談」は物事を決定する際に他の人に意見を求めたり話し合いをすることを意味します。
私の意見ですが、日本人上司は常にこのマナーを重視しているように思います。それを怠れば不要なトラブルを招く原因にもなりかねません。危険性がある問題は避ける必要があります。
最後に日本人と職場を共にするメキシコ人に3点アドバイスをお願いします。
1点目:常に上司とコミュニケーションをとること。
2点目:私たち日本人が仕事をしているとき、メキシコ人は私たちが何か不機嫌だと思いがちですが、集中しているだけですので普通に声をかけてください。
3点目:どんな状況でも連絡することを忘れないでください。時にメキシコ人同士、又は日本人同士だけでコミュニケーションをとりがちですが、皆が事実を知ることが大切です。