ケンジさんの父親は1990年代にニューヨークからグアナファトへ自転車でやって来た。
ケンジさんの父親、トヨカシさんはニューヨークからアルゼンチンまで自転車で行くことを決意しました。しかし、道中のグアナファトで人生のパートナーとなる女性と出会い、その旅は中断することになりました。その決断には多くの人が驚いたそうです。当時の新聞はこの珍しい出来事を取り上げ、「世界を旅する途中で愛を見つけた」という見出しのニュースが掲載されました。このロマンティックな国境を超えるラブストーリーは、サンタ·ロサ·デ·リマののどかな風景を舞台に綴られました。
東京生まれのトカヨシさんは、当時自国の生活に適応することができず、まさにサンタ·ロサ·デ·リマのような静けさを求めていました。YouTubeチャンネル『Japón Desconocido』のインタビューで、「母方の祖父がグアナファトで農業を営んでいたので、父はしばらく農作業の手伝いをしていました」と語っています。
ケンジさんは母親と同じくグアナファトで生まれましたが、幼少期に一家はコアウイラ州に移り住みました。チューニング(車のカスタマイズ)のコンテンツに特化したクリエイターであるケンジさんは、その頃から“周りとは違う”メキシコ人であることを意識するようになりました。
「12歳のとき、自分が100%メキシコ人ではないことに気づき、そこから日本の文化に興味を持ち始めました」とケンジさんは語ります。今日、ケンジさんのYouTubeチャンネルはメキシコと日本を結ぶ架け橋となり、二国の共通点や相違点などを自然体で伝えています。
現在22歳のケンジさんは、本当の自分を見つけようとしています。子どもの頃に一度日本を訪れたことがあるものの、18歳で初めて長期滞在を経験しました。日本国籍を所有しているにもかかわらず、カルチャーショックは複雑だったようです。彼は日本での日常生活を紹介した動画の中で、「車と、タイヤの焦げた匂いと、エンチラーダス·スイサ(メキシコ料理)の大ファン」と語っています。
ケンジさんの北部訛りのスペイン語と、コアウイラの習慣(コリード音楽を聴いたり、バーベキューをしたり、アコーディオンを弾くなど)により、彼のチャンネルはメキシコ人からも、メキシコに興味がある日本人からも、「同胞の声」として支持されています。
数十年前、彼の父親がそうであったように、ケンジさんは自分の心がどちらの国を求めているのかを模索しています。地球の裏側で育ったものの、日本からの影響も受けて成長してきました。ケンジさんはSNSを通じて、自身でそれを発見しながら、フォロワーにも発信し続けています。
YouTube: @kenyinakamura
Instagram: @kenjikuun