同じ春のころ、地球の両側で街を彩る花があ ります。
日本では桜が、メキシコではハカランダが 咲き誇ります。淡い桃色と鮮やかな紫。色合い は対照的ですが、どちらも春の訪れを告げる 存在です。
日本の桜、特にソメイヨシノは、葉が出る前 に一斉に花を開きます。その姿は華やかであ りながら、どこかはかなさを感じさせます。満 開ののち、花びらは風に舞い、川面や歩道を やわらかく染めていきます。花見の席で人々 は語り合い、卒業や入学といった出会い や別れの思い出にも、桜の風景が重 なります。桜は、季節の花というだ けでなく、日本人の気持ちや人生 の節目と深く結びついた特別な存 在です。

一方、メキシコの通りを紫色に 染めるハカランダは、強い日差し の中で力強く咲きます。小さな花が 房になって枝いっぱいに広がり、青い 空によく映えます。花が散ると、地面は紫色 に覆われ、街全体が明るく華やいだ雰囲気に なります。
桜が「はかなさ」や静かな美しさを感じさせ る花だとすれば、ハカランダは元気さや生命 力を感じさせる花だと言えるでしょう。 メキシコに暮らしてほぼ四半世紀がたった 今でも、春になると日本の桜を懐かしく思いま す。しかし、街に咲くハカランダを見上げるた びに、その寂しさは少し和らぎます。
どちらの花も街の中にしっかりと根づき、人 々の生活の大切な場面に寄り添っています。 色も育った文化も違いますが、花が咲くと、私 たちは思わず足を止め、春が来たことを実感 します。桜とハカランダは、遠く離れた土地 で、それぞれの春を静かに、そして鮮やかに 祝福しているのです